形見分けをするにあたり「故人が大切にしていた物を、親族に譲りたい」「愛用していたアクセサリーなどを、遺族以外に贈ってもいいのかしら?」と気になっている人は多いでしょう。
形見分けは日本で古くからおこなわれている慣習で、亡くなった人が愛用していた物や大切にしていた品物などを、家族や遺族・知人などに贈ります。
贈る相手には特に制限がない一方で、避けるべき品物やマナーがあるため、故人の意思を尊重しながら慎重に進めなければなりません。
本記事では、形見分けの進め方やよく選ばれる品物について詳しく解説します。形見分けの基本的な知識やマナーはもちろん、トラブルを避けるために注意すべき点も説明しているため、これから形見分けをしようと考えている人はぜひ参考にしてください。
形見分けとは

形見分けとは、故人の愛用品や思い出の品などを、家族や親族・友人などに贈ることです。故人の思い出を偲ぶために贈るもので、遺品をやみくもに関係者に分け与えることではありません。
明確な記録は残っていませんが、日本では昔からおこなわれており、生前の故人の希望で贈ることもあります。故人が愛用している品を手元に置くことで、残された人にとっては心のよりどころになり、故人にとっては供養になると考えられています。
現代では形見分けとしてさまざまな物が贈られており、身につける物だけでなく趣味の物や家具・家電などを選ぶケースも珍しくありません。
贈り先は家族など親しかった人
形見分けを贈る人は、家族や親族、故人と親しかった人などがほとんどです。贈る相手に特に制限はなく、故人が事前に贈りたいと思っている人なら、誰に贈っても問題ありません。
ただし、目上の人には贈らないなどマナーがあったり、贈る物によってはトラブルに発展したりすることもあります。そのため、贈り先や贈る物は慎重に吟味する必要があります。形見分けの相手や品物を選ぶときは、遺族で相談しながら進めるとよいでしょう。
実行するタイミング
形見分けを贈るタイミングは、宗教によって異なります。仏教の場合は49日の法要後、神道は30日祭または50日祭が形見分けの時期とされています。
キリスト教には形見分けという慣習はありませんが、日本では仏教や神道と同じようにおこなわれることが多いです。形見分けのタイミングは特に決まっていませんが、追悼ミサがおこなわれる30日目など、故人が亡くなってから1ヵ月程度を目安におこなわれています。
形見分けは期日が決められているものではないため、遺族の好きなタイミングでおこなえます。心や生活が落ち着くのを待って、遺族が贈りたいと思ったタイミングで進めるとよいでしょう。
遺品整理の違い
形見分けは、故人の愛用品などを家族や親族・友人などに贈るものです。一方、遺品整理は故人が遺した品物や家を整理して片付けることを指し、形見分け以外にも不用品などの処分も含まれ、目的や内容が異なります。
また、形見分けは故人が愛用していた品や故人を思い起こさせる物が選ばれるのに対し、遺品整理は故人が遺した物すべてが対象になります。
遺品整理をおこなう場合は、形見分けの前に故人の持ち物をすべて確認・整理をします。残す物と処分する物に分けた後に、遺した遺品の中から贈る品物を選ぶことで、遺品整理と並行して形見分けを進められるでしょう。
形見分けで贈る主な品物4つ
形見分けではどのような物を送ればよいのか、分からない人も多いでしょう。多くの場合、故人の愛用品や大切にしていたものがよく贈られています。代表的な品物は、以下の4つです。
- 衣類やカバン
- 趣味の品
- 時計や文具などの小物
- アクセサリー
詳しく説明します。
衣類やカバン
故人が日常に使っていた服や着物などは、形見分けの品として選ばれやすいです。昔から、故人が身につけていた物には魂が宿っていると考えられています。実際に、着物などの衣類が形見分けの品として選ばれていたと慣習としても伝わっているくらいです。
現代では着物ではなく洋服が選ばれることも多く、リメイクした物を贈る場合もあります。衣類など日常に使っていた物を形見分けとして贈る場合は、クリーニングなど手入れをしてから渡すと受け取る人も気持ちよく使えるでしょう。
趣味の品
故人が趣味として集めていた物や愛用していた道具なども、形見分けに選ばれることが多い品物です。故人が大切にしていた物を同じ趣味を持つ人に贈ることで、故人の供養につながると考えられているからです。
形見分けの品としてよく選ばれている趣味の品は、以下のような物が挙げられます。
- 高価すぎないカメラ
- 釣り道具
- 囲碁や将棋
- 本
- 絵画 など
ただし、形見分けには高価すぎる物は選ばないのがマナーです。価値がわからない場合は別の品物にする、もしくは鑑定などをおこなってから贈るようにしましょう。
時計や文具などの小物
故人が愛用していた時計や万年筆などの文具も、形見分けの品としてよく選ばれています。小物は贈られる側にとっても受け取りやすく、また気軽に使えることからも好まれています。
時計や文具なら小さい物が多いので、遠方の人にも気軽に送りやすいです。また。形見分けを贈りたい人が多いときにも便利で、幅広い人に故人の遺品を渡せるでしょう。
アクセサリー
高価でないアクセサリーや髪飾りなども、形見分けの品としておすすめです。故人の面影が強く形見としてふさわしい品が多いため、贈られる側にとっても受け取りやすく、心の拠りどころとして大切に使ってもらえるでしょう。
ただし、アクセサリーの中には高価な品物もあるため、価値を確認してから贈ることが大切です。価値によっては、財産の贈与とみなされる可能性があります。とくに宝石が付いている場合は、念のために外しておくと良いでしょう。
形見分けの進め方3ステップ

形見分けをおこなうときは遺族で話し合い、故人の意思を確認したうえで進めるのが基本です。進め方は大きく、以下3つのステップに分けられます。
- 品物を決める
- 贈る人を決める
- 贈る時期を決める
詳しく見ていきましょう。
品物を決める
故人の遺品を確認し、形見分けする品物を選びます。遺品整理をおこなう場合は事前に品物を選んだり、整理した後で残す品物から形見の品を選んだりすることが多いです。
形見分けの品物選びは、可能であれば遺族全員でおこないましょう。故人が生前に形見分けの希望を伝えていた場合は、故人の意思に沿う形で進めます。
贈る人を決める
形見分けの品物が決まったら、誰にどの品物を贈るかを決めていきます。形見分けを贈る人に特に制限はないので、遺族が了承すれば誰に贈っても問題ありません。故人の希望であらかじめ決まっている場合もあれば、故人と親しかった人から形見分けをお願いされる場合もあります。
ただし、勝手に持ち帰ったり遺族の了承もなく贈ったりすることは避けてください。形見分けを進めるときは、必ず遺族の同意の下で進めていきましょう。
贈る時期を決める
品物と贈る人が決まったら、いつ贈るかを決定します。基本的には忌明け後に贈るとされているため、多くの場合は49日法要や30日祭・50日祭の後が選ばれます。遠方の人に贈る場合は、配送の手配をおこないましょう。
しかし、形見分けは特に急いでおこなう必要はないため、落ち着いてからゆっくり進めても問題ありません。忌明けはひとつの目安ですが、葬儀の直後で慌ただしい時期でもあるため、遺族の気持ちの整理がついてから1年程度を目安に進めるのもよいでしょう。
形見分けをおこなうときに押さえるべきマナー4つ
形見分けをおこなうときは、以下4つのマナーに注意してください。
- 忌明けを待っておこなう
- 故人や受け取る人の意思を尊重する
- 目上の人には送らない
- きれいにしてから渡す
詳しく説明します。
忌明けを待っておこなう
形見分けは、忌中にはおこなわないのがマナーとされています。忌中は故人の死を悼み、喪に服して慎ましく過ごす期間とされているためです。
形見分けの作業を進めるのは問題ありませんが、贈るのは忌明け後にするとよいでしょう。忌中の間は遺品の整理や形見分けの品物選びなどを進めて、品物を贈るのは忌明け後にするのがおすすめです。
故人や受け取る人の意思を尊重する
形見分けは、故人や受け取る人の意思をできるだけ尊重して進めましょう。あらかじめ故人が、形見分けをおこなう品物や人を指定している場合もあります。作業を進める前に、故人の意思が残されていないかエンディングノートなどを確認しましょう。
同時に、受け取る側の意思も尊重することも大切です。万が一受け取りを拒否された場合は、無理強いしないようにしてください。
目上の人には贈らない
形見分けは、親から子などのように目上の者から目下の者へ贈るものとされているため、目上の人には贈らないようにします。
故人の意思などでどうしても目上の人に贈りたい場合は、一言お断りを入れてからにするのがマナーです。故人の意思を伝えたうえで、提案という形で案内するとよいでしょう。
きれいにしてから渡す
形見分けとして贈る品物は、できる限り汚れや埃などを掃除して、きれいな状態で贈ります。衣類などの場合はクリーニングをおこなってから渡すと、受け取る人も気持ちよくもらえるでしょう。
ただし、プレゼントではないのでラッピングは不要です。包装なしで手渡したり、半紙などに包んだりして贈りましょう。
形見分けをおこなうときの注意点3つ
形見分けをおこなうときは、トラブルを避けるためにも以下の3つに注意してください。
- 宝石など高価な品は除外する
- 選んではいけない品物がある
- 不用品として処分しないようにする
ひとつずつ見ていきましょう。
宝石など高価な品は除外する
形見分けの品物は高価な物ではなく、金銭的価値の低い物を選ぶようにしてください。価値のある物は相続税や贈与税の対象となるため、形見分けの品物としてはふさわしくありません。
価値がわからない物は選ばない、もしくは事前に確認してから贈ることが大切です。宝石やブランド時計など明らかに高級品とわかる物だけでなく、価値がわかりにくいコレクショングッズや骨董品などに注意が必要です。
選んではいけない物品がある
形見分けとして贈る物は、愛用していた物や故人との思い入れが深い物から選びましょう。反対に、選んではいけない品物もあるので、選ぶ際は押さえておいてください。
- 生きもの
- 現金・金券
- 壊れている物
故人が飼っていたペットは、事前に受取人の了承を得ている場合は形見分けとして贈っても問題ありません。
不用品として処分しないようにする
形見分けの前に遺品整理をおこなうときは、不用品として処分しないように注意が必要です。形見分けの品物が決まっている場合は、事前に他の遺品とは分けて保管しておきましょう。
形見分けの品物は価値が低い物が選ばれやすいため、遺品整理を他人に任せてしまうと不用品として誤って処分されてしまう可能性があります。事前に形見分けの品物をきちんと選別しておくと、作業に立ち会えない場合でも安心して依頼できるでしょう。
形見分けの進め方まとめ
形見分けは、故人が大切にしていた物や愛用品などを故人と縁の深い人に贈る、日本に古くからある慣習です。通常、忌明け後におこなわれることが多く、故人を偲んだり心の拠りどころにしたりします。
形見分けの品物としては、衣類やアクセサリー・趣味の品などの高価ではない物が選ばれます。故人の意思が尊重され、事前に品物や贈る相手が決まっていることも多いです。形見分けの品を選ぶときは故人の意思を確認したうえで、遺族全員が納得する形で進めるとよいでしょう。
形見分けの前に遺品整理をおこなう場合は、大切な故人の愛用品を誤って処分しないように、あらかじめ仕分けをしてから取り組みましょう。
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