強制退去を言い渡されてしまった場合、自分の荷物がどうなるのか不安になる人は多いでしょう。突然出ていくようにと言われても、住む場所を見つけなければ荷物も運び出せないので、困ってしまうのも無理はありません。
家賃の滞納などで家主から明け渡しを求められ、応じなければ強制退去を言い渡されることがあります。執行されると家にある荷物はすべて強制的に撤去されてしまうため、それまでに対処しなければなりません。
また、強制退去にかかった費用は原則として本人に請求されるため、滞納した家賃に加えて訴訟費用や撤去費用も負担することになります。
本記事では、強制退去の荷物がどうなるかや、費用・流れについて解説します。荷物を撤去されない方法についても説明しているので、ぜひ最後までお読みください。
目次
強制退去とは?概要と適用される条件を解説
家賃を滞納したり明らかな契約違反が発覚したりしてしまうと、強制退去を命じられる場合があります。強制退去の概要や適用される条件について、詳しく見ていきましょう。
概要
強制退去とは、家賃滞納などを理由に法的手段によって強制的に部屋から退去させられることです。居住している部屋の明け渡し請求訴訟がおこなわれた後、強制執行により荷物が撤去され、退去となります。
実際に強制退去により荷物が撤去されるまでには複数の手続きが必要になるため、執行されるまでには猶予期間があります。しかし、強制退去を言い渡されると、指定された期日に荷物を撤去されてしまいます。
また、手続きにかかった費用の一部は賃貸人に請求される可能性があるため、多額の負債を背負うことになりかねません。
家賃などを滞納している場合は強制退去とならないように速やかに支払い、難しい場合は相談してみることが大切です。
適用される条件
強制退去は、貸主が希望すれば必ず認められるわけではありません。執行が認められるのは、以下の条件を満たした場合です。
- 家賃の滞納が続いている
- 支払いの意思が認められない
- 入居者との信頼関係が破綻している
実は、家賃の滞納が続いているからといって、すぐに退去させられるわけではありません。通常は3ヵ月〜半年ほど滞納して初めて、強制退去の手続きに進むことがほとんどです。
また、手続きまでに支払い通知や話し合いなどをおこない、入居者に支払いの意思が認められないことを確認する工程が必要となります。そのため、裁判に発展するまでにも数週間程度の猶予があります。
家賃滞納以外にも入居時に約束したルールを守らないなど、貸主との信頼関係が破綻するような行為があった場合も強制退去が認められます。これらの条件が裁判で認められた場合、強制退去が執行されるようになります。
適用されないケース
上記のような条件をすべて満たしていたとしても、強制退去を避けられる場合もあります。例えば、以下のようなケースです。
- 家主の権利濫用だと認定された場合
- 家賃の滞納が一時的だった場合
強制退去は法律にもとづいて執行されます。そのため、いくら条件を満たしていても貸主が勝手に入居者の荷物などを撤去したり処分したりするのは違法とみなされます。
権利を濫用したと見なされれば強制退去が認められないだけでなく、家主側が罪に問われる場合もあるくらいです。また、体調不良などやむを得ない理由で一時的に滞納している場合などは支払いの意思がないとは認められず、強制退去は執行できません。
事情があって家賃を支払えていない場合で、強制退去の手続きが進められているときは、管理人が知らずに通告しているだけという可能性もあります。強制退去の申し立てに不服な場合は、弁護士などに相談してみるとよいでしょう。
強制退去により荷物を撤去されるまでの流れ
強制退去が執行されるまでには一定の手続きが必要になるため、すぐに荷物が撤去されるわけではありません。手続きの手順は、以下の6つです。
- 本人に通知が届く
- 連帯保証人に通知が送られる
- 督促状や内容証明が届く
- 賃貸契約の解除通知が送られる
- 明け渡し訴訟請求を起こされる
- 強制執行により荷物の撤去がおこなわれる
順番に確認していきましょう。
本人に通知が届く
強制退去の最初の手続きは、本人への通知です。強制退去になる前に貸主から直接支払い督促の電話が来たり、文章で通知されたりします。直接訪問し、話し合いの時間などを設ける場合もあります。
中には滞納分を分割払いにする提案をしてもらえる場合もあるものの、あまり期待しないほうがよいでしょう。一括で払わなければならない場合もあれば、契約解除を前提として話が進むこともあります。
連絡が取れないなどで本人が対応しない場合は、連帯保証人に連絡がいく旨も合わせて通知されます。できればこの時点で家主と和解するのが一番ですが、延滞が続いた場合や話し合いで解決できなかった場合は、次の手続きへと進みます。
連帯保証人に通知が送られる
本人に通知しても家賃が支払われない場合や話し合いが進まない場合は、連帯保証人に連絡がいきます。通常は書面にて連絡し、滞納している家賃を入金するように請求されます。
この時点で連帯保証人から家賃の支払いがあれば、強制退去しなくて済むことがほとんどです。また、連帯保証人を交えて滞納している家賃について話し合いをし、解決へと進める場合も多いです。
連帯保証人に通知を送っても家賃の滞納が解消されない場合や、相変わらず本人との話し合いが進まない場合は、強制退去の法的手続きが進んでいきます。
督促状や内容証明が届く
本人や連帯保証人に連絡や支払い通知を送っても支払いがない場合は、滞納している家賃の支払い請求を督促状や内容証明で送付されます。後日、訴訟になった場合に支払い請求を送った証拠になるように、配達証明や内容証明などを使って送付されることがほとんどです。
家主から内容証明が届いた場合は、訴訟の準備をしていると考えて間違いないでしょう。この時点でも家賃の支払いがない場合は、強制退去の手続きが進められます。
退去したくない場合は早急に家賃を支払うか、話し合いに応じて支払いの意思を見せるなどの行動をしてください。督促状や内容証明が届いても何も対処しなかった場合は、支払いの意思がないと見なされ、強制退去のための裁判へと進むことがほとんどです。
賃貸契約の解除通知が送られる
「督促状や内容証明が届く」で送付した書類の期限が来ても家賃の支払いがなかったり、話し合いが進まなかったりする場合は、賃貸契約の解除がおこなわれます。書面にて賃貸契約の解除通知が送られ、以降は強制退去に向けての法的措置が進むことになるでしょう。
賃貸契約の解除通知も、配達証明や内容証明郵便で送られます。解除通知には契約期間の満了日や賃貸契約を解除する物件名が書かれおり、指定された日までに荷物をまとめて出ていかなくてはなりません。
賃貸契約の解除通知が送られてしまうと、滞納している家賃をまとめて支払ったとしても続けて居住することはできません。そのため、退去したくない場合は解除通知が送られる前に支払いを済ませるようにしてください。
明け渡し請求訴訟を起こされる
賃貸契約期間が満了したにも関わらず家賃の支払いがなく、また部屋の明け渡しもされなかった場合は、明け渡し請求訴訟を起こされます。正式に入居者に対して明け渡しが求められ、入居者と連帯保証人に対して滞納している家賃を請求されます。
裁判終了後に強制退去が執行できるように、執行文付与の申し立てが同時におこなわれることがほとんどです。裁判では裁判所から和解が勧告されますが、見込みがない場合は裁判所が判決を下し、強制退去を執行できるようになります。
強制執行により荷物の撤去が行われる
明け渡し訴訟請求がおこなわれた後も入居者が立ち退かなかった場合は、強制執行となります。裁判所から「催告書」が届き、期日までに部屋を明け渡すように告知されます。
裁判所から催告書が届くと、入居者はその日までに部屋を立ち退かなければなりません。執行日までに退去しなかった場合は執行官により強制退去が執行され、家具や家財などの残っている荷物はすべて撤去されます。
強制退去が執行されると、これまでにかかった費用なども家賃に加えて請求されてしまいます。
強制退去により撤去される荷物の保管場所や保管期限
強制退去が執行されると、撤去されてしまった荷物はどうなるのか、気になる人は多いでしょう。ここからは、保管場所や保管期限、また期限までに引き取りに来なかった場合について解説します。
保管場所・期限
強制退去になった荷物は、裁判所が指定した民間の倉庫などで保管されます。保管期間は約1ヵ月で、期間内に本人もしくは親族が引き取りに行かなければなりません。
期限までに引き取りに来なかった場合
指定された期日までに荷物が引き取られなかった場合は、執行官によって廃棄もしくは売却されます。保管期間が終わるとすぐに廃棄や売却されることが多く、基本的に交渉して期間を延長してもらえないので注意してください。
売却した際に出た利益は、執行費用に充てられます。
強制退去となった場合に請求される費用の内訳
強制退去の際にかかった費用は家主が立て替えていることが多いため、手続きや執行にかかった費用は滞納した家賃と一緒に入居者に請求されます。強制退去になった場合に発生する主な費用は、以下のとおりです。
- 内容証明費用(切手など)
- 裁判費用(書類発行費用、予納金など)
- 強制退去の執行費用(荷物の運搬費用、保管・廃棄費用、開錠費用など)
強制退去の執行費用には、運搬車両費や荷物の保管費用なども含まれます。ワンルームでも数十万円の費用が発生し、一軒家の場合だと100万円を超えることもあります。そのため、裁判や強制退去が執行される前に解決するように努めましょう。
強制退去を言い渡された人が荷物を撤去されないためにやるべきこと
強制退去を言い渡された人が荷物を撤去されないためにできることは、以下の3つです。
- 滞納していた家賃を払う
- 次の住居を見つける
- 執行日までに荷物の撤去・処分をおこなう
強制退去を言い渡されてしまうと撤回するのは難しいものの、荷物を守れる可能性はまだ残されています。自分の荷物を守るために、ひとつずつ押さえておきましょう。
滞納していた家賃を支払う
強制執行されないために真っ先にすべきことは、滞納している家賃を支払うことです。家賃の支払いを済ませれば貸主としても追い出す理由がなくなるため、強制退去で荷物を撤去されることはまずありません。
滞納している家賃を一括で払うのが難しい場合や、早急な支払いは困難という場合は、支払う意思はあることを伝えて相談しましょう。支払い可能な時期を伝えれば、場合によっては待ってもらえる可能性があります。
ただし、賃貸契約を解除されてしまった場合は、たとえ家賃を支払ったとしても覆ることはありません。続けて居住したい場合は、できるだけ早期に家主と相談するなどして解決を図るようにしましょう。
次の住居を見つける
支払いの目処が立たない場合や、家主との話し合いで解決できなかった場合は、強制退去を免れることはできません。いち早く次の住居を見つけ、荷物を移動させられるように準備しましょう。
新たな住居が見つけられないことには、荷物を退避させられません。最悪の場合は倉庫やスペースを借りるなどして、荷物の移動先を確保することが大切です。
次の住居がなかなか見つからない場合も、家主に報告して猶予をもらえるように相談しておくとよいでしょう。連絡を怠ると日に日に強制退去の手続きが進んでいき、取り返しがつかなくなってしまいます。
執行日までに荷物の撤去・処分をおこなう
強制退去が執行されてしまうと家の中にある荷物はすべて撤去されるため、期日までに自分で荷物を撤去および処分をしましょう。運搬してもらう荷物を大型の家具や家電のみにすれば、引越し業者などに依頼しても最小限の費用で抑えられます。
必要なら家族の手を借りるなどして、必ず期日までに撤去をおこなってください。執行日には執行官が来てしまい、たとえその場にあなたがいたとしても強制的に荷物が搬出されてしまいます。
強制退去の執行により撤去された荷物はきちんと保管されるとはいえ、引越しのときほど丁寧に扱われないことがほとんどです。大切な荷物がある場合は、執行日までに必ず撤去をおこなってください。
強制退去で荷物を撤去される人のよくある質問
ここからは、強制退去で荷物を撤去する人がよくする質問について回答します。
Q.費用を支払えないのですがどうすればいいですか?
まずは、支払期日について家主や管理人に相談してみましょう。場合によっては、分割払いに対応してくれることもあります。
また、各自治体で実施している生活福祉貸付制度を利用すれば、低金利で借入ができるので利用してみるのもよいでしょう。
【参考】生活福祉資金貸付制度|厚生労働省
指定された日までに家賃を支払えない場合は、連帯保証人に請求されてしまいます。
Q.強制退去されるまでの日数はどれくらいですか?
内容証明を受け取ってから強制退去が執行されるまでの日数は、3〜4ヵ月ほどかかることがほとんどです。スケジュール的には比較的日数があるので、それまでに家賃を工面する方法を模索してみるとよいでしょう。
それぞれの手続きごとに、決められた「支払い日」や「退去日」「執行日」などが通知されています。必ず日程を確認し、その日までに解決できるように動いていきましょう。
強制退去の荷物についてまとめ
家賃滞納などが続き支払いの意思がないと見なされてしまうと家主から明け渡し訴訟請求を起こされ、最悪の場合、強制退去になることがあります。
強制退去が執行されると自宅にある荷物はすべて撤去されるため、それまでに家賃を支払うなどして対処しなければなりません。強制退去で荷物を撤去されないためにできることは、以下の3つです。
- 家賃を支払う
- 次の住居を見つける
- 荷物を撤去・処分する
今すぐ支払うのが難しい場合や、事情があって滞納している場合は、訴訟になる前に家主や管理人に相談しましょう。支払い通知や督促状が届いた場合は無視せず、払う意思があることを伝えて強制退去で荷物を撤去されないように交渉してみてください。
強制退去になる前に荷物を撤去したい場合は、ぜひ「遺品整理みらいへ」へご相談ください。不用品の廃棄や片付け・清掃までお手伝いいたします。退去の日や予算などに合わせて作業内容をご提示いたしますので電話・メール・LINEにて、ぜひお気軽にご相談ください。