孤独死はなぜ起こるのだろう?と、気になる方は多いのではないでしょうか。高齢者に多いイメージを持たれるでしょうが、実は若者にも見られ、今や社会全体で解決すべき問題とされています。
しかし、家族が孤立している状態に陥ったとしても具体的な対策や、相談先がわからず不安だけが募っている人も多いのかもしれません。孤独死は対応が遅れるほど影響が大きくなり、家族の負担も増大してしまうため、少しでも早く兆候を見つけて対策することが大切です。
本記事では、孤独死の原因や共通点について、詳しく解説します。前兆や家族への影響についてもわかるようにしているため、孤独死について不安に思っている方は、ぜひ参考にしてください。
孤独死とは?概要と傾向について解説
孤独死の概要や定義は明確に定められています。ここでは、孤独死に陥りやすい人の傾向とともに解説します。
概要と定義
孤独死とは、誰にも看取られることなく一人で亡くなること、また長期間亡くなったことに気付かれない状態を指した言葉です。社会から孤立した状態で亡くなることから「孤立死」と呼ばれることもあり、自殺で亡くなった人も含まれます。
内閣府の調査では「孤立死(誰にも看取られることなく亡くなった後に発見される死)」とされていますが、確立した定義はなく、また全国的な統計も存在しないと報告されています。
しかし、孤独死(孤立死)は年々増加しており、社会問題となっています。とくに、高齢者の割合が多いことから早急な対策が求められており、さまざまな対策が進められています。
男性に多い傾向がある
2021年に報告された、一般社団法人日本少額短期保険の「孤独死現状レポート」によると、孤独死は男性に多い傾向があることがわかっています。
2020年度の孤独死の男女比は、男性が8割を占めており、女性よりも圧倒的に多いことがわかります。死因の7割近くは病死となっている一方で、死因不明も2割程度を占めています。
孤独死に男性が多い理由としては、女性よりも家族や近所との付き合いなど、周囲とのコミュニケーションが苦手な傾向があるためです。孤独死に直結する状況に陥りやすく、発見もやや遅れがちになるでしょう。
孤独死する人の特徴・共通点7選
孤独死は誰にでも起こりうるものですが、特徴や共通点もあります。主なものは、以下の7つです。
- 一人暮らしをしている
- 高齢である
- 社会から孤立している
- 趣味や楽しみがない
- 家事が苦手で家が荒れている
- 病気を患っている
- 経済的に困窮している
詳しく見ていきましょう。
一人暮らしをしている
パートナーとの離別や死別により一人暮らしとなったために、体調の急変に気付くのが難しくなると孤独死に陥りやすいです。高齢者に限らず、若年層の人であっても一人暮らしで周りの人と接点を持っていないと、孤独死になることもあるでしょう。
年代を問わず孤独・孤立は社会問題となっており、令和5年には孤独・孤立対策推進法が施行されました。社会に孤独や孤立する人を残さず、相互に支え合い、人と人とのつながりが生まれる社会を目指すとしています。
【参考】孤独・孤立対策推進法|内閣官房
高齢である
孤独死する人を年齢別に見てみると、65歳以上の人が半数近くを占めるというデータもあります。高齢になると健康面などに問題を抱えやすくなることに加え、長年寄り添ったパートナーとの死別や離別で一人暮らしになるケースも少なくありません。
また、年を取るごとに環境適応能力が低下すると言われています。そのため、高齢になってからの生活スタイルの大きな変化は、心身ともに疲弊して孤立を深めやすくなり、孤独死へと直結してしまうのです。
社会から孤立している
近所や社会との交流が少なかったり、身近に頼れる人がいなかったりする人も、孤独死につながりやすいと考えられています。とくに一人暮らしの男性に多く見られ、病気や困りごとについて相談できる人がおらず、社会から孤立してしまうケースが増えています。
社会との接点が少なくなっているために、亡くなった後も気付かれないまま長期間放置されるケースも少なくありません。実際に、孤独死で亡くなった人の6割以上が死後4日以上経ってから発見された、というデータもあるくらいです。
孤独死を防ぐために社会との接点の持ち方や、すでに孤立してしまった人に対しての支援が求められています。
趣味や楽しみがない
趣味や楽しみがない人も家にこもりがちになり、社会との接点が絶たれてしまうため、孤立死につながりやすくなります。新たな趣味を持つほどの気力がない、余暇を楽しむ心の余裕がないなど、精神面に根本的な原因を抱えていることも少なくありません。
また、病気や怪我などが原因となり、これまで楽しんでいた趣味が楽しめなくなったというケースもあります。趣味や楽しみがないと活力がなくなり、社会からの孤立を加速させることにつながりかねません。
家事が苦手で家が荒れている
家事が苦手な人や家がごみ屋敷状態になっている人も、孤独死に陥りやすい傾向が見られます。
家事が苦手な人は食事が適当になったり掃除ができず衛生面が悪くなったりして、体調不良につながりやすくなります。さらに、病気にかかって気力がなくなると部屋を片付けられなくなり、ごみ屋敷状態になってしまうという悪循環に陥りかねません。
悪循環を自ら断ち切れず、こうした状況がさらに孤独死の確率を高めてしてしまいます。
病気を患っている
持病を持っていたり健康状態が悪かったりすることも、孤独死につながる要因のひとつです。高齢者だけでなく若者の孤独死の原因にも多く、うつ病など精神的な病を抱えている人は、自殺などで孤独死する場合もあります。
病を患うことで家から出なくなり、誰とも会わない時間が増えていき、最終的に周囲から孤立して亡くなってしまいます。病気がきっかけで孤立することは決して珍しくないので、気付いたらいち早くサポートをしてあげることが大切です。
経済的に困窮している
孤独死が増えている原因のひとつに、経済的な困窮も挙げられています。実際に内閣府の調べによると、60歳以上の人が今後の暮らしに対して3割近くが「多少心配」「非常に心配」との回答が見られました。
【参考】高齢者の経済状況|内閣府
生活費を気にして冷暖房を使わずに生活するなど、生活苦が高齢者の体調に与える影響は大きくなっています。高齢者の貧困率は年齢が上がるほど上昇傾向が見られるものの、若年層の孤独死の要因としても挙げられます。
年齢に関係なく、必要に応じて経済的な支援も孤独死を予防する対策になると言えるでしょう。
孤独死する人が見せる前兆
孤独死する人には、亡くなる前に共通した前兆があるとも言われています。注視しておくべき前兆は、以下の3つです。
- 死別や離別などで一人暮らしになった
- 部屋に物が溢れてきた
- 周辺の人との付き合いを避けるようになった
前兆が見られることが必ずしも孤独死につながるわけではありませんが、当てはまる事項があれば気にかけてあげるとよいでしょう。詳しく説明します。
死別や離別などで一人暮らしになった
配偶者と死別や離別して一人暮らしになってしまった場合は、生活面や精神面を注視しておきましょう。一人になってしまったことによる悲しみやストレス、孤独感が精神状態に悪影響を及ぼし、うつ病につながる場合があります。
また、孤立感を強める原因にもなり、元気で体力がある人でも体調を崩してあっという間に亡くなってしまうケースも見られます。
とくに、仲の良かった夫婦が死別した場合は残されたパートナーに大きな影響を与えるため、こまめに様子を見てあげるとよいでしょう。
部屋に物が溢れてきた
部屋が以前よりも荒れてきた場合や、片付けるように言っても状況が変わらない場合も、要注意です。片付ける気力がない場合や一人では片付けられない場合は、精神的に異変をきたしているケースがあるので、気をつけなければなりません。
セルフネグレクトやうつ病になっていないか、注意深く見守る必要があります。高齢者の場合は認知症が進んでいるために、片付けられないこともあるでしょう。
また、買い物依存症などが原因で物が溢れかえっていることも多いので、部屋の状態だけでなく暮らし方にも注目してみてください。
周辺の人との付き合いを避けるようになった
以前よりも他人との接触を避けるようになったときも、孤独死の兆候として挙げられます。孤独感や孤立が強まっていたり、うつになっていたりするケースが考えられます。
これまで穏やかだった人が突然乱暴になるなど、性格が変わったように感じる場合も、早急な対策が必要です。一人では対処が難しいと感じたときは、他の家族・親族や専門家などに相談してみることをおすすめします。
孤独死を未然に防ぐ対策5選
孤独死は早めに対策を取ることで、未然に防げる可能性があります。主な対策は、以下の5つです。
- 近所や地域とのつながりを持つ
- 連絡を密に取る
- 民間のサービスを利用する
- 老人ホームに入居する
- 早めに相談する
ひとつずつ説明します。
近所や地域とのつながりを持つ
近所や地域とのつながりを積極的に持つようにすれば社会から孤立せずに済むため、孤独死する前にサポートを受けやすくなります。異変を感じたときにすぐに見に来てくれたり、日頃から気にかけてもらえたりするため、孤独死になる前に対処できるでしょう。
地域のイベントへの参加を促したり、町内会などに積極的に関わってもらったりなど、社会から孤立しない状況を作ると効果的です。これまでの経歴や経験などを踏まえ、つながりやすいところで積極的に人と関わる機会を持つとよいでしょう。
連絡を密に取る
家族が一人暮らしをしている場合は、こまめに連絡を取ることを意識してみてください。年代を問わず有効な手段で、定期的に近況を尋ねたり何気ない話をしたりするだけでも孤独感を和らげられ、精神的にもよい影響を与えます。
とくに、体調が悪いときは密に連絡を取り、必要に応じて自宅を訪ねるなど臨機応変に見守ることが大切です。遠方でこまめに様子を見るのが難しいときは電話やLINEを利用するなど、状況をしっかり把握するように努めてみてください。
高齢者や持病を持っている方であれば普段以上に気にかけ、「食事が摂れているか」や「困りごとはないか」など、丁寧に聞いてあげるとよいでしょう。
民間のサービスを利用する
遠方に住んでいるなどでこまめな見守りが難しい場合は、民間の見守りサービスを利用する方法もあります。
見守りサービスでは以下のように、さまざまなサービスを受けられます。
- 自宅にカメラや見守りセンサーを設置する
- 見守りアプリを利用する
- デイサービスを申し込む
サービスを利用することで、遠く離れていても生活の様子を把握でき、問題が生じたときでも早急な対応が可能です。予算や本人の身体・精神状態によってサービス内容を選べるので、対象者に合った方法で利用できるのが大きなメリットです。
自分や家族だけで24時間見守るのには限界があるため、少しでも手厚くカバーするために民間サービスを利用することをおすすめします。
老人ホームに入居する
老人ホームや介護施設などに入居するのも、孤独死を防ぐ対策のひとつです。
費用はかかるものの、専門知識を持ったスタッフが見守ってもらえるため、遠方に住んでいるなどで日常的な手助けが難しい場合におすすめです。とくに、高齢者の一人暮らしや持病を抱えている場合ほど、必要なサービスと言えます。
ただし、老人ホームなどに入居しようにも施設に空きがない、費用が高額すぎるなど、利用するのが難しいケースも少なくありません。利用を検討している場合は費用面なども含め、早めに準備を進めることが大切です。
早めに相談する
家族が社会から孤立しそうな場合や、すでに孤立していると思われる場合は、早急に周りに相談するようにしましょう。自治体や病院・介護施設などにある相談窓口なら、孤独や孤立を防ぎ、生活を支える方法について専門家の力を借りられます。
とくに、持病やうつ病を患っていたり、認知症の疑いがあったりする場合は急いで相談し、対策を練ることが大切です。早目に対応することで孤独感や孤立感が悪化するのを防ぎ、より適切な対策が取れるようになるでしょう。
孤独死が遺族に与える影響
孤独死が遺族に与える影響は大きく、計り知れないものです。ここからは、孤独死の後に生じる負担を精神的および経済的な観点から、それぞれ解説します。
発見者や遺族の精神的負担
孤独死は死亡してから一定以上の日数が経った状態で発見されることが多いため、発見者の精神的負担が大きくなります。また、家族を孤独死させてしまったという、遺族の精神的負担も大きいものです。
とくに、両親など大切な家族を孤独死させてしまった場合、発見が遅れたために変わり果てた姿を見たことが大きなトラウマになることもあります。孤独死させてしまったという事実を受け入れられず、日常生活が送れなくなってしまうことも多いのです。
特殊清掃などの経済的負担
孤独死してから発見されるまでにかかった日数や現場の状況によっては、特殊清掃などが必要なケースも少なくありません。
とくに、夏場や密室での孤独死は清掃だけでなく消臭や脱臭などの特別な作業が必要になり、費用負担が大きくのしかかります。実際に特殊清掃を依頼した場合、状態が悪ければ50万円を超えることもあるくらいです。
また、部屋が荒れていたりごみ屋敷と化していたりした場合は、片付けの費用も高額になることが予想されます。上述の特殊清掃と併せると、100万円を超えることもあるでしょう。
孤独死により経済的なダメージを最小限に抑えるためにも、定期的に連絡を取り、いち早く気付ける状況を築くことが大切です。
孤独死の原因についてまとめ
孤独死は昨今の日本で大きな社会問題となっています。あらためて、孤独死してしまう原因と共通点を7つピックアップしてみました。
- 一人暮らしをしている
- 高齢である
- 社会から孤立している
- 趣味や楽しみがない
- 家事が苦手で家が荒れている
- 病気を患っている
- 経済的に困窮している
上記に当てはまる人が、必ずしも孤独死してしまうとは限らないものの、注視しておくことが大切です。
適切な対処を取ることで、未然に防げる可能性を上げられます。悲しい孤独死を防ぐためにも、まずは孤立しそうな前兆をいち早くつかみ、状況に応じてこまめな対策を取りましょう。
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